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​木戸 修 彫刻展

木戸 修 彫刻展によせて

 

 木戸修氏と私の歴史は、約30年前の助手と生徒という関係まで遡る。それは大学に初めて金属専門室が作られた頃、まさに日本の金属彫刻の幕開けの時期と重なる。以来、木戸氏は東京芸術大学彫刻科教授として指導の傍ら、金属彫刻家として数々の出品、そして受賞経験があり、まさに日本の金属彫刻芸術の第一人者である。

 

 木戸氏の一つのテーマである螺旋作品は、有機的でありながらも、宇宙の雄大なうねりが表現されている。このシリーズに限らず、自身の作品全ては、緻密な計算と経験を元に制作されている。

 研究室には、自身が考案した部材を螺旋に曲げる特殊な機械がある。溶接時には熱膨張があり、他の部材に比べて扱いが難しいステンレスは、まず、この機械で、木戸氏に導かれるかのように、緻密な計算のもとに成形され、作品となる。作品を作り上げるプロセスは、彫刻家の感性とエンジニア的な頭脳の集結であり、絵描きでありながら科学者であったダビンチを彷彿させる。

 

 木戸氏の作品の前に立ち見つめていると、まさに美しいという言葉の一言につきるが、と同時に見果てぬ宇宙へ優しく導いてくれるような感覚を抱く。それはまるで、躍動感のありながらも、親しみと安らぎを感じる雄大なうねりが、天空へのロマンへ誘う入り口ではないかという錯覚にも似ている。

 

 今回の木戸修展では、新作を含む10余点の作品を発表する。

 

いりや画廊代表 中村茂幸

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