五十嵐 威暢 展

空知のかたちに囲まれて・五十嵐威暢

 

粘土の塊を削り、叩き、削ってつくるとき

故郷の空知のかたちが生まれる。

自分の体が土に対峙する瞬間に体のエネルギーが変圧するように思う。

ダイレクトカービングの醍醐味がそこにある。

 

今回は道具を極力使わないで、

代りに体を使って制作を試みた。

陶芸では手を道具につくることは普通だが、

ぼくが使ういつものテラコッタの土は相当に硬いから

道具を使わないと彫塑は難しい。

粘土を素材にぼくは彫刻するのだから、彫るか叩くかが基本で制作が行われる。

 

ふつうの陶芸で使う粘土は恐ろしく柔らかい。

指を普通に動かすだけで反応してくれる。

ピアノを弾くようにかたちが生まれる。

久しぶりにそれが嬉しかった。

 

かたちに添うように釉薬が流れた。

その微妙な繊細さが美しい。

空知の記憶が素直にかたちになった気がする。

 

小さな立方体の粘土の塊に体の動きが加わり、一瞬に変形してかたちが生まれる。その数は約50個。乾燥後の釉薬が土の表面を多い、焼成されて色のマントを装う。これらが空間に呼応して、壁をを埋めて大きなひとつの作品となる。

 

五十嵐威暢展「空知のかたちに囲まれて」

開催のご案内

2014年4月14日から5月3日 11時30分〜19時30分(最終日16時まで)

 

 

 

彫刻家、五十嵐威暢氏の言葉の中に、「子供の様に・・・」という表現が度々使われます。計画という過程を踏まず、いきなり本番に臨み、結果を計算しない、子供ならの素材とのたわむれこそが、デザイン界の頂点を極め、彫刻家へと転身した五十嵐氏の制作においての原点です。

 氏曰くデザインもアートも、自分自身の見る力が基礎となり、その精度が作品の質を決めると言います。今展は陶芸用の軟質の粘土でありながら、道具を極力使わず、手や指や肘や足を総動員し、身体と自身の感覚を頼りに、彫って叩いて削るという基本的な方法により作り上げた作品です。

 体のエネルギーが土に対峙する瞬間、粘土の塊に体の動きが加わり、おぼろげな故郷・空知地方の色や形、川と山からの風や匂いなどの記憶を呼び起こし、一瞬にしてかたちが生まれます。そして、素焼きされた作品と共に乾燥後の釉薬が土の表面を覆い、焼成されて色のマントを装われた微妙に繊細でかつ美しい作品の数々は、まるで自然がくれた「かけら」。これこそまさに、「あそぶ、つくる、くらす」が一体化した世界から生まれ、自由さや素材感との対話といったアートの本質を強く押し出した、氏にとってのダイレクトカービングの醍醐味であり、作品は、その象徴としての産物ではないでしょうか。今回の展示では、これらの数々の作品が空間に呼応し、大きなひとつの作品となり空間いっぱいに展示されます。発想や視点、そして立ち位置を変えることで、自由で奔放な独自の素材との対話を試みる氏の作品の数々は、私たちに、再び「アートの原点とは何か」を思い出させてくれるのではないでしょうか。五十嵐威暢氏の世界を一人でも多くの方々にご堪能頂きたく、皆様のお越しを心よりお待ちしております。

いりや画廊学芸員 園浦 眞佐子

 

 

 

五十嵐威暢氏

1944年 北海道滝川市生まれ小学生の頃は工作少年として日々を過ごす。中学入学時に上京し、部活のブラスバンドに熱中。高校入学直前にデザインと出会う。多摩美大卒業後、カリフォルニア大学大学院に留学し、美術修士号を取得。1970年に東京で独立。デザイナーとして国内外で25年の活動後、本拠をロサンゼルスへ移し、彫刻家に転身。2005年、米国から帰国して、三浦半島の秋谷と故郷にアトリエを構えた。2011年4月、多摩美術大学学長に就任。