本展覧会は、東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻染織研究分野1年に在籍中の学生の制作研究成果展である。
 展覧会タイトルの「Tri—Be」は、挑戦(Try)・存在(Be)・集合(TriBe)の3つ意味があるという。3つの意味というより、三者三様の挑戦、存在の集合・仲間なのだろうと勝手に解釈してしまうのは何故か。
 石井淳、河野紘幸、村尾拓美のそれぞれに共通しているのは、作品の表現や方向性は異なるが、未だ解決しない己の作品のカオス(カオスの解釈は歴史的、哲学的に色々とあるが、ここでは渾沌としておく)からもがきながら抜け出そうとする姿勢、エネルギーの状態にあるということである。その願望がタイトルになっているような気がする。
 私のように還暦を過ぎ、四十年近く制作活動を続けていると、気をつけないとこのカオスの状態が失われていく。経験と要領で作品ができるようになると作家としての生命も危うい。潔く退却したほうが良いかもしれない。カオスの中にはたくさんの宝物が潜んでいる。作品を深めるためには、いつでも未知数なことに挑戦する姿勢が大切だ。常にその時の感性を生かすために新しいカオスを生み出すことを忘れてはならない。
 人間は年をとるにつれて様々な社会経験をする。体力も衰え、自然や食に対する嗜好も変化していく。若い時には感じなかったものが体の中に染み込むように入ってくる。自分の心身が変化していくのに作品が変化していかないのは
おかしい。制作を続けながら常に新しい表現を目指すことは、時に修行僧のように辛いことである。しかし、自問自答しながら体に染み込んでくるものに素直に向き合えれば、楽しく制作できるかもしれない。
 こだわりを持て、こだわりを捨てろ、いつでも0スタート。
この三人の取り組みに対して、厳しい叱咤と暖かい視線でご高覧いただければ幸甚である。

東京藝術大学染織研究室
教授 上原利丸


 

東京藝術大学大学院染織研究領域1年成果展
「Tri—Be」
石井淳、河野紘幸、村尾拓美

2018年3月26日(月)-31日(土)

11:30-19:30(最終日-16:00)