第6回いりやKOUBO
審査結果発表
いりや大賞
三原 航大
準大賞
森下 聖大・巾崎 知佳
原武典特別賞
鐵羅 佑
金田 実樹・佐々木 里桜
入選
スズキ リン・高田 文
滝澤 一 ・立花 航
布藤 喜帆・藤田 野々
松本 康平・森田 実穂
総 評
第6回「いりやKOUBO」審査を終えて8月18日15時より、第6回「いりやKOUBO」の審査が始まりました。今回もこれまでと同様、8名の審査委員の皆様に一堂にお集まりいただき、応募作品の一つひとつを丁寧に鑑賞しながら、作品から感じ取ったことや疑問、そしてそれぞれの作品に対する考えを言葉にし、互いに共有しながら作品を紐解いていくという形で、審査が進められました。今回のテーマは、「○○○の○○○に、自分の作品を展示したい!」です。このテーマでは、単に「どのような作品をつくるのか」を考えるだけではなく、「その作品をどこに置くのか」までを作家自身に考えていただきました。自ら選んだ場所に作品を置くことによって、作品はどのような意味を持つのか。 その場所だからこそ生まれる表現とは何なのか。 そして、作品と空間が出会うことで、どのような新しい可能性が生まれるのか。そこまでを含めて、一つの作品として考えていただくことが、今回のテーマでした。実際に審査を進めてみると、作品そのものだけではなく、作品と場所との関係からさまざまな発想や物語、そして想像を超えたシチュエーションが生まれ、とても興味深い審査となりました。また、今回の応募作品を拝見していて、彫刻という表現そのものが、時代とともに大きく広がっていることを改めて感じました。一昔前の彫刻といえば、ブロンズ、石、石膏、木などが主な素材として考えられていました。しかし今回の作品には、ガラス、陶、乾漆、蜜蝋、金属、布、レジンなど、実にさまざまな素材が用いられていました。それぞれの素材が持つ性質や美しさ、可能性を作家自身が追求し、それを自分の表現として形にしている。その姿勢を感じることができたことは、今回の審査における大きな喜びの一つでした。一つひとつの作品について、形、素材、コンセプト、そして展示される場所との関係を読み解いていく中で、人はそれぞれに異なる感性や価値観を持ち、それぞれの方法で未来を切り拓いていくことができるのだということを、改めて感じさせられました。8名の審査委員の皆様にとっても、今回の時間は、単に作品を「審査する」というだけのものではなかったのではないでしょうか。若い作家たちの作品に触れ、その思いや感情、挑戦する姿勢に触れることで、私たち自身にも新しい発見や刺激が生まれる、そんな貴重な時間となりました。
いりや画廊代表 中村 茂幸
いりや大賞
三原 航大
「 大河をわたる船 」
素材:ガラス・弁柄

想定する作品の置かれる場所

この作品は、人間の内に堆積し続ける記憶や思いを表現したものである。自身がとらえる記憶の形をインサイドモード(仲子)として造形し、ガラス内部に封入することで、移ろいゆく記憶を永続的な存在として留めたいという願いを表現している。外 形を船形としたのは、経験や記憶を積荷として抱え、人生という旅を続ける人間の姿と船の姿を重ねたためである。
作品には、ガラスの中に生じる気泡なども単なる素材の特性としてではなく、作品の表現の一部として丁寧に取り込まれています。また、設置する場所や光の当て方によってさまざまに表情を変えるガラスという素材の特性を、高度な技術によって見事にまとめ上げていました。さらに、光によって生まれる「陰」と「陽」の対比が作品に奥行きを与え、見る角度によって異なる美しさを感じられる造形も大きな魅力となっています。素材の特性を十分に生かしながら、技術と造形の両面で高い完成度を実現した作品として、審査委員から高い評価を得ました。
遠くまで街並みが見渡せる高層ビルの窓前
作品説明
審査員コメント
準大賞
森下 聖大
「 ユメウツツ 」
素材:樟・油絵具

想定する作品の置かれる場所

テーマ:「入眠直前の感覚」と「盆栽や観葉植物がもつ形や空間」を掛け合わせた彫刻作品。(一木彫り) 本作品の台座は、盆栽鉢のイメージです。 頭部には、鉢から露出している植物の幹とイメージを重ねて彫りました。 瞼を閉じた表情は、潜在意識に溶け込み自分の内面と対峙する導入として選びました。 頭頂部から上に広がる波や渦のような造形は、幹から伸びる枝や葉がつくる空間と、入眠直前の感覚を探りながら彫りました。
楠を用いた本作品は、全体のバランスがよく、素材の特性を生かした造形が印象的でした。特に、一本の木から作品をつくり上げている点に面白さがあり、のみの技術と色彩によって、あたかも作品が二分割されているかのように見える表現も高く評価されました。一方で、楠そのものの素材感や美しさをより生かすためには、塗装を施さなくてもよいのではないかという意見もあり、素材の扱いについても活発な意見が交わされました。
日本家屋の床の間
作品説明
審査員コメント
掛け軸の前など正面性が強く、来客の視線を集めるような空間を想定した作品
準大賞
巾崎 知佳
「 残響‐Echo‐」
素材:二液性樹脂・石・綿・絵の具

想定する作品の置かれる場所

石やレジンの積層や削れていく感覚が、化石や標本の並ぶ博物館のイメージと重なりました。化石を掘り出す時や顕微鏡を覗く時、新しい何かが見つかる瞬間の、わくわくとした探求心を思い描きながら制作しています。過去の痕跡が未来に向けた発見や変化に響くことを願って。
本作品は、樹脂と本物の石という異なる素材を巧みに組み合わせることで、独特の神秘性を感じさせる作品に仕上げられていました。素材それぞれの特性を熟知した高い技術力に加え、テーマ性、造形、表現力のいずれにおいても一定の高い水準に達しており、完成度の高い逸品として評価されました。絵の具などの素材も効果的に取り入れ、それぞれの特性を生かしながら一つの世界観をつくり上げている点も印象的で、神秘的な魅力をより一層引き立てていました。
化石や標本を扱う博物館の中
作品説明
審査員コメント

